”恐ろしき者の末”緒方三郎惟栄 その7 -「壇ノ浦の戦い」能登殿最期-

「壇ノ浦の戦い」能登殿最期、平家物語。

平教経(たいらののりつね)、平清盛の甥、平知盛の従兄弟、数々の合戦で武勲を上げ、「たびたびの合戦で一度の不覚も取ったことはない」「王城一の強弓精兵」と言われた平家随一の猛将である。
都落ちの後、劣勢の平家の中、一人気を吐き続け、水島の戦い~六ヶ度合戦~屋島の戦いと奮戦し、屋島では佐藤兄弟の兄「佐藤継信」を射殺すなど、源氏を恐れおののかせ苦しめ続けた。
心折れること無く奮戦し続けるも、大勢は変わらずここ壇ノ浦で最後の時を迎える。


平家物語より「能登殿最後(平教経)」

味方の裏切り、多勢に無勢、すでに勝敗は決し、源氏の兵たちが平氏の船に乗り移り、水手・梶取達まで殺害している。
覚悟を決た一門の者たち、そして二位尼と安徳天皇が入水する中で、教経はなおもひとり阿修羅のように戦い続けた。
矢を射続け坂東武者たちを射落とし、矢が尽きれば、大太刀、大長刀を左右の手に持ち、敵を斬り捨て続けた。
これを見た平知盛は使いを出して「もう罪つくりなことをするな、教経の相手が出来る敵でもあるまい」と伝えた。
「ならば、敵の大将の源九郎(義経)と刺し違えん」と意を決し、教経は舟から舟へ乗り移り、敵を薙ぎ払いながら義経を探した。
そして、義経の舟を見つけてどうと飛び移り、組みかかろうとしたが、義経はゆらりと飛び上がるや、舟から舟へ八艘彼方へ飛び去ってしまった。
早業ではかなわないと思った教経は

”今はこれまで”

と覚悟を決め、その場で太刀をうち捨て、兜も脱ぎ棄て仁王立ちとなり大音声(をあげた)

平教経画:菊池容斎

平教経
画:菊池容斎

「さあ、われと思わんものは組んで来てこの教経を生け捕りにせよ!鎌倉の頼朝に言いたいことがある!」

源氏の兵たちは恐れて誰も組みかかろうとはしない。
そこで、土佐の住人で安芸郷を治めていた安芸大領実康の息子に三十人力で知られた安芸太郎と次郎の兄弟、そして同じく大力の郎党三人が、生捕って手柄にしようと組みかかった。
教経は先ず郎党を海へ蹴り落とすと、安芸兄弟を左右の脇に抱えて締め上げ

「貴様ら、死出の山の供をせよ」と言うや

兄弟を抱えたまま海に飛び込んだ。
平教経(能登守)享年二十六歳。


平家物語原文より

今はかうと思はれければ、太刀・長刀海へ投げ入れ、甲も脱いで捨てられけり。
鎧の草摺りかなぐり捨て、胴ばかり着て、大童になり、大手を広げて立たれたり。およそあたりを払つてぞ見えたりける。恐ろしなんどもおろかなり。能登殿、大音声
「われと思はん者どもは、寄つて教経に組んで生け捕りにせよ。鎌倉へ下つて、頼朝に会うて、ものひと言言はんと思ふぞ。寄れや、寄れ」
とのたまへども、寄る者一人もなかりけり。
ここに土佐国の住人、安芸郷を知行しける安芸大領実康が子に、安芸太郎実光とて、三十人が力持つたる大力の剛の者あり。
われにちつとも劣らぬ郎等一人、弟の次郎も普通には優れたるしたたか者なり。安芸太郎、能登殿を見たてまつて申しけるは、
「いかに猛うましますとも、われら三人取りついたらんに、たとひたけ十丈の鬼なりとも、などか従へざるべき」
とて、主従三人小舟に乗つて、能登殿の船に押し並べ
「えい」
と言ひて乗り移り、甲のしころを傾け、太刀を抜いて、一面に打つてかかる。
能登殿のちつとも騒ぎたまはず、まつ先に進んだる安芸太郎が郎等を、裾を合はせて、海へどうど蹴入れたまふ。続いて寄る安芸太郎を、弓手の脇に取つてはさみ、弟の次郎をば馬手の脇にかいばさみ、ひと締め締めて、
「いざ、うれ、さらばおのれら、死出の山の供せよ」
とて、生年二十六にて、海へつつとぞ入りたまふ。


緒方三郎惟栄館跡のアザレア
岡城ヒストリー「”恐ろしき者の末”緒方三郎惟栄 」シリーズ一覧


~岡城ヒストリーについて~

この記事は大分県竹田市にある国指定史跡「岡城」にまつわる歴史研究書籍・伝承・逸話を元に、各種の書籍と文献を参考資料として編集しています。
記述内容の誤りや、資料の信憑性、歴史考証の新たな発見と共に内容が修正されることがあります。
また「おそろしき者シリーズ」の源平合戦の描写は「平家物語」や「吾妻鏡」等の参考文献の中で、故人を偲び褒め称える表現も多く、時系列や実際の記録とは違う人物描写の部分がありますが、英雄譚としての逸話の部分も大切な郷土の記憶となるようにと、採用している部分がございます。その部分につきましては、可能な限り注釈にて、事実と創作を判断して頂けますように注意しております。
800年の時を超えて今に伝わったこの大切な史跡がこれから先も末永くその歴史と文化を伝えていく事を願って編纂編集に努めて参ります。


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